印刷物のユニバーサルデザインに取り組んでいて、色覚や視覚に配慮した印刷物制作を進めたい。音声コードで見えにくい方にも情報を届けたい」
ある方にそんなことを話したところ、
「ダイアログインザダークを体験してみたら?」
聞いたことはあったけれどどんなもの?ということでまずは体験してきました。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」とは、真っ暗な空間で視覚以外の感覚を使ってさまざまなことを体験するエンターテイメントです。「コミュニケーション向上」「チームビルディング」「イノベーション能力向上」「リーダーシップ養成」「ダイバーシティ推進」等の目的で企業研修のワークショップもあるそうですが、一般向けでは「見えない」を体験するもの、という印象です。
詳細は公式サイトをご覧いただくとして、今回の体験を書いてみます。
定員は8名のようですが、今回の参加者は全部で6人。
荷物は貴重品も含め全てロッカーに預けます。腕時計や携帯・スマホなど、光を発するものの持ち込みは禁止。
持っていくのは白杖です。いろいろな長さの白杖があり迷いましたが「おヘソのちょっと上くらい」というアドバイスで選びました。
私たちを誘導(アテンド)してくれたのは全盲のニノさん。ちょっと緊張していた面々に、「僕はニノです。でも嵐のニノじゃないよ!」と自己紹介してくれて笑いが起こります。参加者もそれぞれニックネームで自己紹介。
薄暗い部屋で白杖の使い方を教えていただき、暗さに慣れたところでいよいよ真っ暗闇へ。
これほどまでに真っ暗なことは、記憶にある限り経験がありません。
私は自分が眼を開けているのか閉じているのかさえよくわからない感覚になりました。とにかく真っ暗。
停電で真っ暗といっても懐中電灯やスマホの光があります。月明かりや星が見えることもあるでしょう。
ここではそれらも一切なし。
本当に 本当に 本当に 真っ暗!
恐怖すら感じました。
そんな視覚を奪われた状態で体験したのは「秋を感じる見えない東北の旅」。
白杖で足元を探り探り、アテンドのニノさんの声を頼りに進みます。
点字ブロックや路面状態の変化など、普段は特に気にしていなかった足裏の感覚。
音量だけでなく方向や距離などにも注意を払って聴く音声。
形はもちろん質感や大きさ、柔らかさ、いろいろなことを感じる触覚。
慣れてくると白杖も周囲を知る手段となり、視覚以外から得られる情報を少しでも多く得ようとしていました。
参加の皆さんとは「こっちで〜す!」「○○さん来てますか〜?」とお互いに声をかけ合い、ときに手が触れ手を引き、次第に一体感のようなものを感じるようになりました。
90分という時間があっという間でした。人によって感じることや得るものは違うと思いますが、多くの方に体験してほしいものだと思いました。
何年も、もしかしたらずっと視覚を奪われた状態の方と、限られた時間だけ体験するのとは全然違うと思います。それでも体験してみることの価値はあると思いました。
ご興味のある方は「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の公式サイトをご覧になってみてください。
プログラムは季節によって変わるようなので、私もぜひまた体験したいと思います。