当社はメディア・ユニバーサルデザインにも配慮しています。メディア・ユニバーサルデザインとは、色を区別しづらい方、疾患のある方、高齢の方…それぞれのハンディーキャップにかかわらず、すべての人に正しく情報が伝わるようにするという考え方です。その一環として音声コード Uni-Voice(ユニボイス)も導入しました。
シネマ・チュプキ・タバタでドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち』を観てきました。
この映画の公式サイトにあるイントロダクションには次のように紹介されています。
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耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらうために挑んだ、
3人の舞台手話通訳者たちの記録。
その映像を目の見えない人にも伝えられないか?
見えない人に「手話」を伝えるにはーーー。
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まずは「シネマ・チュプキ・タバタ」という映画館について簡単にご紹介。
この映画館は「障がいの有無にかかわらず、誰でも映画を鑑賞できるユニバーサルシアター」として東京都北区で運営されています。ここで上映される映画は全て映画音声ガイドと字幕がついています。「車いすスペースや親子鑑賞室を設置し、イヤホン音声ガイドや字幕付き上映を常時行う、ユニバーサルシアター」として平塚千穂子さんが代表をされています。
そして『こころの通訳者たち』という作品。
これは3人の舞台手話通訳者たちが手話でお芝居を伝えるというドキュメンタリー映像を、見えない人にも伝えるための音声ガイドづくりに挑んだ人々のドキュメントです。
見えない人 に 手話 を 伝える んです。
話はそれますが、私は前職で日本語版制作という仕事をしていました。
外国映画や海外ドラマを、日本語に吹き替えたり日本語字幕をつけたりする仕事です。
外国語を日本語にした場合の情報量は、吹き替え版で7〜8割、字幕だと3〜4割になると言われています。
画面の中の俳優さんがしゃべっているわずかな時間で伝えるには、どうしても情報の取捨選択をせざるを得ません。
それでも「観客・視聴者は画面からの情報取得にハンディキャップのない人」というのが無意識の前提で、「映像を見ればわかる」「声の抑揚を聞けば伝わる」と思って制作していたと思います。
チュプキの映画についている音声ガイドや字幕を制作するのと、作業的には似ている部分はあれど意識としては大きく違うように思いました。
話を戻しましょう。
今回の作品は「見えない人に手話を伝える」んです。
見えない人に「見る言葉=手話」を伝える。
いや不可能でしょ。
それに挑んだ人々がいるんです。
この映画を観た感想を「すごい」とか「感動した」とかいう言葉では表せません。
うまく言えませんが、自分がかつて携わっていた吹き替え制作や字幕制作と、いまやろうとしている「見えにくいをなくしたい」ことが繋がろうとしているような感覚。もちろんまだ繋がっていないんですが。
そして、見えない人、聞こえない人に「配慮する」という言い方が、おこがましいという感覚。
誤解を恐れずに言えば、
見えない人は「聴く語(音声)」を使う。
聞こえない人は「見る語(字幕、手話)」を使う。
そんなシンプルなことなのかもしれない、と思いました。
使う言語が違うだけ。だから通訳すればちゃんとコミュニケーションは取れるんだ。
そして最初から音声も字幕もついていれば言語が違っても伝わるよね…。
うまいまとめはできませんが、いま自分が仕事の中でできるのは印刷物に音声コードを付けること。
「聴く語」を使う人にも伝わるように。
その先にもっと何かできることがあるかもしれない。
チュプキ代表の平塚さんに「やりましょう」って言っていただいて、なんだか勇気をもらった気持ちで家路につきました。
『こころの通訳者たち』の上映は3月15日で終了しました。
でも本作品はチュプキ制作映画なので、いずれ再上映の機会もあるのではないでしょうか。
その際はぜひご覧になってみてください。