字幕制作の経験が生きる 年史の原稿作成

 

デザインの仕事をする前は、海外ドラマや映画の「日本語版制作」という仕事をしていました。
「日本語版制作」とは、外国語の映画やテレビ番組、ゲームなどのコンテンツを日本語に翻訳し、日本語の音声(吹替え)や字幕を制作する仕事です。

私が日本語版制作を始めた頃は、吹替版よりも字幕版の方が多かったように思います。声優さんを起用する吹替版より、字幕版の方が制作費が安価ということもあったのでしょう。

 

字幕制作では、まず翻訳者が原語を日本語に翻訳します。字幕翻訳者としては戸田奈津子さんが有名ですね。ほんの数回ですが、ご一緒させていただきました。

翻訳者さんは原語をただ日本語に訳すのではなく、画面の話者の喋りに合わせた文字数のセリフにします。

セリフとなった字幕原稿を受け取ってからが、字幕制作者の主な仕事になります。翻訳者が訳したセリフが映像に対して適切か、話者の喋りと合わせたときに文字数が多すぎ・少なすぎないか、などを確認して、不適当であればセリフを直します。

その後、クライアントに確認してもらいます。

 

ここでいうクライアントとは、劇場用の映画であれば映画配給会社の担当者、テレビ放送用であればテレビ局の担当者、ということになります。

 

私が字幕制作を始めた初期には、某テレビ局の担当さんからとても丁寧な(当時はキビシイと感じた)原稿チェックを受けました。

セリフについている「?」や「!」などの役物(やくもの)の使い方も一つひとつ「イルカ」とチェックが入り、本当に必要かどうかを検討させられました。

 *イルカ=要るか=必要か?ということ

例えば、「出身はどちらですか?」というセリフに「?」は必要か?という具合です。確かに無くても通じますよね。
映画や海外ドラマでは、画面で俳優さんが話している雰囲気でもニュアンスが伝わります。そのためなおさら役物の使い方を意識しろ、ということだったのでしょう。

 

 

  

いくつもの作品でそういう指摘を受け、役物の使い方も意識するようになりました。

役物は、文章に疑問や驚き、間を持たせる、などそれぞれの効果がありますが、あまりにも頻繁に使用すると文章が読みづらくなってしまいます。また、文章の文脈によっては使用しない方がよい場合もあります。

今、年史の原稿確認をする際などはそのときの経験が生きていると感じています。役物が多用されていて読みづらくなっていないか、本当に必要な役物か。そんなことも意識して使うことを心がけています。


一方でSNSやブログなどでは、絵文字やマークを積極的に使用することで、文章をより親しみやすく魅力的にすることができます。いわゆる「字面(じづら)で伝わることもあるでしょう。

文章の目的やターゲット、あるいは時代に合わせて、役物や絵文字も使い方を意識して適切に使用していきたいと考えています。